クラウドファンディングを実施すれば、自力で資金調達が難しいプロジェクトも実現できる可能性があります。しかし、そのためには何から始めるべきなのかわからない人も多いでしょう。この記事では、個人・法人を問わず、初めて利用する人でもわかるように、クラウドファンディングの始め方や成功例を紹介します。
クラウドファンディングとは
クラウドファンディングとは、不特定多数の支援者から少額ずつ資金を集めるシステムです。個人や団体がプロジェクトやアイディアをウェブ等で公開し、賛同する人々から実現に必要な資金を募ります。たとえば、地元の農産物を全国に広めたい、新しい商品を開発したい、文化的なイベントを企画したいなど、さまざまな目的に利用されています。
クラウドファンディングのやり方:6つのステップ
1. プロジェクトの詳細を決定する
クラウドファンディングによる資金調達を成功させるためには、まずプロジェクトの詳細な計画を立てることが重要です。具体的には、以下の項目について考えましょう。
- プロジェクトの内容
- プロジェクトの目的
- 資金額の目標
- クラウドファンディングの決済方法
- 目標期間
- ターゲット層
- リターン
- 支援者とのコミュニケーション方法
プロジェクトの内容が具体的であるほど、支援者から信頼が集まり、資金集めに成功しやすくなります。リターンが製品の場合は、製品の生産量や生産期間、支援者への配送方法もあわせて考えておきましょう。
2. 利用するクラウドファンディングサイトを決める
プロジェクトの詳細を決めたら、クラウドファンディングサイトを選びます。クラウドファンディングサイトにはさまざまな種類があり、それぞれ特化している事業や特徴などが異なります。たとえば、地域活性化に特化したサイト、投資に特化したサイトなどがあります。プロジェクトの性質に合わせ、最適なサイトを選びましょう。
クラウドファンディングに利用するサイトを選ぶ際は、登録方法や手数料の設定、利用者の年齢制限、プロジェクトのサポート体制など、各サイトの規約や特性を詳細に比較検討する必要があります。
3. プロジェクトページを作成する
適したクラウドファンディングサイトを決めたら、プロジェクトを紹介するためのページを作成する必要があります。概要や背景、意義とともに、熱意を伝えて支援者の共感を呼ぶためのエピソードなどをのせると良いでしょう。
また、サイトに掲載する前には、作成したプロジェクトページを運営側が審査し、内容が違法ではないか、支援金の使用目的が明確か、などを評価します。審査基準はサイトごとに異なるため、事前に各サイトの基準を確認しておきましょう。
問題がなければ審査を通過できますが、掲載の承認後でも運営からプロジェクトページの修正提案や助言を受ける場合があります。運営から指示があれば、なるべく早く対応を取りましょう。
4. 集客を行う
審査を通過しプロジェクトが公開されたあとは、集客に力を入れましょう。クラウドファンディングを成功させるためには、多くの人々にプロジェクトの目的や魅力を理解してもらい、支援してもらうことが不可欠です。
幅広い人にプロジェクトについて知ってもらうためにも、SNSやブログをはじめとする各種メディアを通じて情報を発信しましょう。PR TIMES(ピーアールタイムズ)などのプレスリリースサービスを活用したり、イベントや講演会などの対面での説明会を実施することで、さらなる支援を得られる場合もあるでしょう。
5. 支援者に活動の経過を伝える
クラウドファンディングの開始後は、支援者への定期的な活動報告が重要です。たとえば、現在までに集まった金額や支援者の数など、具体的な進捗状況を伝えるとよいでしょう。活動報告があれば、すでに支援してくれた人々はプロジェクトがどのように進んでいるのかを理解できるため、安心して支援を続けてくれるはずです。
さらに活動報告は、支援しようか悩んでいる人々にも影響を与え、クラウドファンディングへの参加を促す効果も期待できます。以前からプロジェクトに興味を持っている人が活動報告を見て、信頼できると判断し、支援を決意することもあるでしょう。
6. 支援者に感謝を伝え、リターンを手配する
クラウドファンディング終了後は、目標金額達成の成否にかかわらず、支援者へ感謝を伝えましょう。そして資金調達の達成後は、プロジェクトの実現まで支援者とコミュニケーションをとり続けることが大切です。活動の様子をInstagram(インスタグラム)などのSNSやブログで公開し、資金が正しく使用されたと示していきましょう。支援者はプロジェクトに対する社会的・個人的な影響を感じ取ることができるため、将来的なさらなる支援や支持を期待できるかもしれません。
お礼の品を提供する場合は、おしゃれなパッケージやメッセージカードなどで特別感を演出し、支援者に対し記憶に残る体験を提供することで、将来的にも支持を受けやすくなるはずです。配送作業が負担になる場合は、発送代行サービスの利用も検討してみてください。スムーズにリターンを届けられ、プロジェクト以外の業務の影響も軽減できます。
クラウドファンディングの種類と仕組み
1. 寄付型クラウドファンディング:リターンなし
寄付型クラウドファンディングは、返礼品(リターン)なしで資金を募る形式です。支援者は社会的な貢献や支援の実感を得るために、プロジェクトに資金を提供します。たとえば、災害支援や慈善活動などでは、この種類のクラウドファンディングがよく利用されています。
リターンがないとはいえ、プロジェクトによっては、計画の進行状況や成果についての報告、支援に対する感謝を綴ったメールや手紙の送信をリターンに設定している場合もあります。また、商品の提供といった物理的なリターンが設定されることも稀にあるようですが、あくまで支援が主な目的となるため、安価で商品を購入できるなどの金銭的な利益が発生することはほとんどありません。
2. 購入型クラウドファンディング
購入型クラウドファンディングは、支援者が資金を提供し、リターンとして製品やサービスを受け取る方式です。新製品の開発に向けて資金を募る場合、その製品を割引価格で購入できる権利をリターンとして設定する場合もあります。他の方法と比較すると、物質的なリターンが多く、支援者を集めやすい手法と言えるでしょう。
クラウドファンディングの成立条件は、「All-or-Nothing方式」と「All-In方式」の2種類によく分類されます。「All-or-Nothing方式」は、目標金額の達成が必須で、未達成時はプロジェクトが不成立となり、集まった資金は支援者に返還されるのが特徴です。「All-In方式」では、目標金額に達しなくても一定の支援があればプロジェクトが成立したことになり、他の資金調達方法なども組み合わせながらプロジェクトの実現やリターンの手配を行うことになります。
3. 融資型クラウドファンディング
融資型クラウドファンディングは、起案者が支援者から資金を集め、特定の企業や個人に資金を貸し出す仕組みです。借り入れた資金で行われた事業からの分配金や、提供した資金に対する利息が支援者へのリターンになります。
融資型クラウドファンディングの利用には、金融商品取引法や第二種金融商品取引法業者の登録などが求められるため、個人では起案者にはなれない点に注意しましょう。利回りは通常3~12%の範囲で、プロジェクトの成功に応じて変動します。高いリターンが期待できるため、リスクを受け入れられる支援者にとっては魅力的な投資となります。
4. 投資型クラウドファンディング
投資型クラウドファンディングは、支援者が企業や個人のプロジェクトに資金を提供し、分配金を期待する仕組みで、法人のみが起案者となります。第一種少額電子募集取扱業や第二種金融商品取引業の登録が必要で、リターンが得られないリスクについて支援者に明確に説明する責任があります。
投資型クラウドファンディングには「株式投資型」と「ファンド型」が存在します。株式投資型は、法人が未公開株を提供し支援を募る方法で、企業の成長次第で大きなリターンが期待できます。ただし投資上限が設けられており、個人投資家は企業1社につき50万円、投資を受ける企業側は年間1億円までとなっています。加えて、起案者は第一種少額電子募集取扱業の資格が必要です。
ファンド型は、法人が特定の事業プロジェクトへの出資を募る資金調達の方法です。売り上げに応じた分配金や製品、サービスなどをリターンとして支援者に提供しますが、起案者は第二種金融商品取引業の登録が必要です。
クラウドファンディングのメリットとデメリット
クラウドファンディングは、複雑な手続きや事業計画書の準備を必要とせず、誰でも気軽に資金調達を行える点が強みです。特に、金融機関から融資をうけることが難しい中小企業や起業家にとって有効な手段となります。
さらに、クラウドファンディングでは支援者とのプロジェクトを通した交流が生まれるため、製品やサービスへのファンを獲得できる可能性があります。また、事業計画の初期段階で潜在顧客の反応を得られるため、新製品やサービスの市場反応を測るテストマーケティングにも適しています。
しかし、デメリットも存在します。目標金額に届かない場合に資金を得られない「All-or-Nothing方式」では全額返金が発生し、その後のプロジェクトの進行が困難となることがあります。目標金額に到達しなくても資金を受け取れる「All-in方式」であったとしても、資金不足のリスクを抱えたままプロジェクトを進める必要があり、計画に支障を来す恐れがあります。
また、クラウドファンディングではプロジェクト内容をウェブ上で公開する必要があるため、アイディアを第三者に模倣されるリスクも否めません。海外では実際に、クラウドファンディングで7億円以上の支援金を集める大成功を収めた「Fidget Cube(フィジェットキューブ)」のデザインが、製品の販売前に他のメーカーにコピーされた事例があります。このような状況を避けるためにも、クラウドファンディングで公開する前にアイディアの特許出願を行うことも視野に入れましょう。
クラウドファンディングのおすすめサイト5つ
CAMPFIRE(キャンプファイヤー)
CAMPFIREは日本最大級のクラウドファンディングプラットフォームで、個人や企業、自治体など幅広い起案者をサポートしてきました。これまで約10万件のプロジェクトで総額970億円以上の資金(2025年1月時点)を集めています。掲載は無料で、入金する際に支払う成功手数料が17%必要です。また、審査が簡略化されており、迅速にプロジェクトを開始できる点も特徴です。
Makuake(マクアケ)
Makuakeは、サイバーエージェントが運営する新しいアイディアやサービスの実現に特化したクラウドファンディングプラットフォームです。2013年の開始以来、42,000件以上のプロジェクトを掲載し、1,000万円超の調達事例も1,700件以上あります。掲載費用は無料で、手数料は応援購入金額の20%(税込、決済手数料含む)が必要です。
プロジェクト設計やプロモーションに関するアドバイスを運営側から受けられることや、Makuakeが運営するメディアやアプリを活用した広報支援が特徴です。
READYFOR(レディーフォー)
READYFORは、2011年に日本で初めて設立されたクラウドファンディングサイトです。プロジェクト掲載料は無料で、手数料は運営手数料9%と決済手数料5%を合計して14%で、比較的安価に設定されています。
READYFORでは、プロジェクトの企画から公開までを専任の担当者がサポートするため、起案者は専門知識がなくても効果的なプロモーションを行うことができます。ほかにも、広報活動のサポートやプロジェクトの進捗をリアルタイムで確認できる分析ツールの提供も行われます。ただし、サポート内容によって手数料が異なるため、掲載前に確認しましょう。
FUNDINNO(ファンディーノ)
FUNDINNOは、未上場のベンチャー企業に対する株式投資が可能なクラウドファンディングプラットフォームです。2017年にサービスを開始し、日本で初めて個人がベンチャー企業への投資を10万円という少額から始められる環境を提供しました。さらに、複数名の公認会計士といった専門職に審査されたベンチャー企業だけが登録されているため、信頼性が高いことも特徴のひとつです。
FUNDINNOに事業者として登録する場合は、税別で審査料10万円と審査に掛かる実費が請求されます。さらに、募集が成立した際は、手数料として10~20%が税別で徴収されます。
GREEN FUNDING(グリーンファンディング)
GREEN FUNDINGは、モール型クラウドファンディングを展開する国内有数のプラットフォームで、映画や音楽、アートなどのクリエイティブ分野に特化している点が特徴です。
CCC(TSUTAYA)グループによるマーケティング支援が特徴で、蔦屋書店や家電、TSUTAYA店舗を活用した体験展示や販売イベントなど、クラウドファンディング終了後も支援を受けられます。なお、GREEN FUNDINGは目標金額に達しなければ支援金を返金するAll-or-Nothing方式を採用しており、プロジェクト成功時のみ支援総額の20%を手数料として徴収します。
クラウドファンディングを成功させるコツ
魅力的なプロジェクトを計画する
クラウドファンディングで成功を収めるためには、プロジェクトが共感や支援を呼び込む内容であることが重要です。プロジェクトのアイデアだけでなく、起案者の人柄や信頼性も伝わるようにしましょう。加えて、支援者にとって魅力的なリターンを準備することも成功のカギです。たとえば、多くの人にとって価値のある製品をリターンに設定することは、有効な手段のひとつです。
マーケティング活動に力を入れる
クラウドファンディングの成功には、効果的なマーケティング活動が不可欠です。そのためには、以下のコンテンツを充実させることが重要になります。
- PR動画
- 画像
- 信頼性
- プロジェクトページのコピーライティング
PR動画はプロジェクトページのみならず、さまざまなプラットフォームやインスタマーケティングなどのSNSマーケティングでも利用できるため、特に力を入れましょう。動画では、プロジェクトの説明や起案者の背景、製品のストーリー、なぜ支援が必要かを伝えることが一般的です。長さは2~3分以内に抑え、視聴者の注意を引く内容にしましょう。コンテンツの準備はクラウドファンディングの起案者が行っても問題ありませんが、必要に応じてクリエイターに依頼することも視野に入れましょう。
最初の5日間で目標金額の20%達成を目指す
クラウドファンディングでは、最初の5日間で目標金額の20%を達成できれば、プロジェクト全体の成功率が90%まで高まることが、READYFORの調査で明らかになっています。また、中でも特に重要なのは最初の3日間だと言われています。初期の勢いをつけて、より多くの支援者を獲得するために、プロジェクト開始前からSNSで告知したり、早期支援者向けの特典を設けたりするといった工夫を取り入れましょう。
クラウドファンディングの成功例
SONIC SOAK(ソニックソーク)
SONIC SOAKは、超音波を活用して微細な泡で汚れを洗浄する超音波洗浄機のクラウドファンディングプロジェクトです。リターンとして、商品を40%から60%割引で提供することで、大きな話題となりました。その結果、6,561人の支援者から1億円を超える支援の獲得に成功しました。
HUG COFFEE(ハグコーヒー)
静岡県に位置する地域密着型コーヒーショップ「HUG COFFEE」は、新型コロナウイルスの影響で存続の危機に直面するも、クラウドファンディングで300万円の目標金額を公開初日に達成しました。プロジェクトページに地域に根ざした活動と顧客への深い感謝の気持ちが伝わる内容を記載したことが、多くの支援者を集める結果につながりました。
#HIROSHIMA ミライバトン
#HIROSHIMAミライバトンは、G7広島サミットと連動して、「平和だから音楽やエンタメを楽しめる」といったメッセージを込めたエンターテインメントショーを開催するプロジェクトです。不安定な国際情勢の中で、平和の大切さを訴え、未来につなぐことを目的に定めた、社会貢献できるプロジェクトであることが特徴です。
プロジェクトには、人気アーティストのライブや国内最大級のドローンショー、世界的パフォーマンス集団の参加があり、魅力的な体験を提供するリターンで3000万円以上もの支援を集めました。
まとめ
クラウドファンディングは、不特定多数の支援者から事業やプロジェクトの資金を集める手法です。プロジェクトの計画や目標を立てたり、リターンを用意したりと様々な準備が必要なものの、始めること自体は難しくありません。
成功のカギは、支援したくなるような魅力的なプロジェクトを計画することです。お得に購入できる機会であることを強調したり、プロジェクトの意義やエピソードで共感を呼び起こすことで、クラウドファンディングで高額な支援を集められる可能性があります。魅力的な製品のアイディアを持っているものの、資金調達の難しさから開発に踏み切れなかった経験のある人は、クラウドファンディングを活用してみましょう。
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よくある質問
クラウドファンディングは複数サイトで同時に行っても大丈夫?
クラウドファンディングは、複数サイトで同時に行える場合がほとんどです。しかし、支援者が分散してしまい、それぞれのサイトで設定した目標金額に到達しないリスクもあるため、ひとつのサイトに絞ることをおすすめします。
クラウドファンディングにかかる手数料は?
クラウドファンディングサイトで資金調達が成功した場合、支援金額の5~20%が利用手数料として差し引かれます。決済に手数料がかかる場合もあるため、利用するクラウドファンディングサイトを決める際に、比較検討しましょう。
クラウドファンディングを途中でやめる方法は?
クラウドファンディングのプロジェクトを途中でやめることは、原則認められていません。しかし、特別な事情がある場合に限り、運営に事情を説明して承諾を得ることで終了できます。キャンセル手数料が発生する場合もあるため、利用するサイトの規約を前もって確認しておきましょう。
文:Ryotetsu